萌えよ！ 軍艦学校 その５

「第５回目だね」
「ずいぶん久しぶりの更新ね」
「軍艦学校が二週間ぶりで、ブログが一週間ぶりだね」
「ガッコも始まったしねえ……これからしばらく更新鈍るかもね。雑談はさておき、今回はジュットランド海戦と、それが与えた影響についてだよ」

「第一次世界大戦、特にジュットランド海戦の時には既にイギリスは超弩級戦艦を完成させていたんだけど、ドイツはまだ弩級艦しか保有してなかったんだ」
「そもそも量自体も少なかった。ジュットランド海戦に参加したドイツ海軍の主力艦はイギリスの三分の二、斉射時の弾丸量では半分以下でしかなかった」
「でも、ジュットランド海戦は結果的に言うとドイツの勝利に終わったんだ。まあ、判定勝ちってレベルで、しかもその後の展開を見るに試合に勝って勝負に負けたという感じだったけど。それはそれとして、ジュットランド海戦での被害は主力艦に関してはイギリスが巡洋戦艦を4隻沈められたのに対して、ドイツは巡洋戦艦1隻と前弩級戦艦1隻だったんだ。理由は……まあ、前回言ったとおり水平防御の不備だね」
「ちょっと待って。あちこちの資料では巡洋戦艦の防御薄ってなってるけど……」
「もちろん、それもあると思うよ。でも、その問題は水平防御に比べれば些細だと思うな。この時期の巡洋戦艦の平均的な水平装甲が60～80mm、一方戦艦が100mm弱ぐらいだから……正直、そう変わらないんだよね。ジュットランド海戦では、たまたま巡洋戦艦が沈んだけど、戦艦だったから沈まなかったかというとそうじゃないと思うよ」
「ふーん……」
「巡洋戦艦に限らず、この時代の戦艦大よそにおける弱点だったとみなしたほうがいいと思うよ」

「ジュットランド海戦の結果は当事者であるイギリス、ドイツの他にも戦艦を保有する各国に影響を与えたんだ。何しろ戦略兵器であるはずの戦艦が簡単にあぼ～んしちゃう可能性がでてきちゃったから」
「戦略兵器はそれが存在することに意義がある。簡単に失われるようなものだと戦略兵器足りえない」
「特にショックを受けたのは日本。何しろ、日本に当時あった弩級戦艦、超弩級戦艦は弩級の中でも旧式の設計に近い河内型が二隻、防御の薄い巡洋戦艦金剛型が四隻、水平装甲だけじゃなく砲の配置上、防御に欠点のある扶桑型が二隻とその改良型の伊勢型二隻だけだったから不安も不安、大不安だったわけよ」
「ジュットランド海戦の結果で、下手すれば戦艦全部が無駄になりかねなかったわけね」
「そのとおり。ところで、一時大戦に日本は参加したものの、本土を直接戦火に見舞われる事がなかったために、他の国から軍需品や民需品の注文を受け好景気になった」
「歴史で習ったわね。大戦景気でしょ」
「そう、そしてこの好景気を背景に海軍は新たな艦隊整備計画をする。これが八八艦隊っていうやつ」
「八八艦隊は戦艦八隻、巡洋戦艦八隻を根幹として多数の補助艦艇もそろえるという超大規模艦隊整備計画」
「架空戦記の定番ネタだね。これとかそれとか」
「計画自体は日露戦争終わったごろからあったんだけどね。予算の裏付けが出来たのが1920年。もっとも、その裏づけも大戦景気のバブルによるものだから、無茶にもほどがあるんだけどね」
「どれくらい無茶なの？」
「そうだね……艦隊をセットでそろえて維持するのに国家予算の半分が吹っ飛ぶね。もちろん、海軍だけだよ。維持費だから一回払えばそれでおしまーい、ってものでもないし」
「それはひどいわね……」
「国を守るために軍隊があるのか、軍隊を守るために国があるのか判らなくなる」
「で、その八八艦隊の戦艦はもちろん、ジュットランド海戦の戦訓を取り入れたものだったんだ。八八艦隊計画の戦艦郡のようにジュットランド海戦の戦訓を取り入れたものをポスト・ジュットランド型戦艦と言ったりするよ」
「もっとも、ポスト・ジュットランド型戦艦は存外少ない」
「そうなの？　どうして？　弩級艦と前弩級艦みたいに総入れ替えになってもおかしくないいと思うんだけど……」
「ワシントン条約のせいだよ」
「野生動物の保護を……」
「つかさ……よそ様のネタを使うのはやめなさい」
「(´・ω・`)　ｼｮﾎﾞｰﾝ」
「もちろん、ここでいうワシントン条約は1921年に開かれたワシントン海軍軍縮会議で決められた条約のことね。この会議の結果、各国の旧式戦艦と未成艦は軒並み廃棄されることになったんだ」
「結果的にはこれは悪くは無かった」
「どうして？」
「第一に旧式艦を廃棄することによって海軍の主力艦の新陳代謝が行われたこと。第二に未成艦を廃棄して計画艦を作らないことによって、少なくとも国家が自国海軍に押しつぶされる心配が減ったこと」
「八八艦隊計画に対抗するようにアメリカじゃ三ヵ年計画（ダニエルズ・プラン）という名前の艦隊整備計画があったし、イギリスも新型の戦艦四隻、巡洋戦艦を四隻そろえる計画があったんだよ。もちろん、アメリカも日本も景気がいいとはいえ、こんな大艦隊を作ってなお財政を圧迫させないだけの余裕があるわけじゃない。一次大戦をもろに戦ってきたイギリスは尚更。ワシントン条約はある意味渡りに船だったんだよ」
「軍事が経済に関わるところは少ないからね……公共事業にはなるかしら」
「で、その結果日本、イギリス、アメリカは（その時期に）世界で最も大きい艦砲である16インチ砲を積んだ艦を合計七隻完成させる。これがビッグ・セブンと呼ばれたもの。ちなみにビッグ・セブンは全てポスト・ジュットランド型戦艦だよ」
「そして、これから約20年弱この三国で戦艦は建造されない」
「条約期間が続いたからだね」
「そう。そしてこの期間を海軍休日（ネイバルホリデイ）というよ。というわけで、ポスト・ジュットランド型戦艦の出来た背景については説明終了だね。キリがいいから今日はここまでにしとくよ」
「次回は何をやるの？」
「次回はいよいよ黎明期の空母についてやる予定らしいよ」
「ふふふ。次回は私が講師をやりますよー」
「あ、ゆきちゃん、おはよー」
「はい。おはようございます」
「うわっ……ってみゆき、あんた居たんだ」
「作者が「あの人がいるとこなたが講師の意味が無くなる」っていう理由で登場させてなかったからね……戦艦関係に関してはあたしが、空母関係に関してはみゆきさんにやらせようということになったんだ」
「いい加減な人ですからどうなるかはわかりませんけどね」
「というわけで楽しみに待っててねー」

なお、今回以下のサイトよりアイコンおよび画像を使用させていただきました。
モアイ部さま