今回レビューするのは戯画の「この青空に約束を」
(キャラ紹介やルート別感想はそのうち追加するかもしれません)
ちなみに、全然関係ないのですが、近い時期に「群青の空を越えて」「青空の見える丘」という二つの「青空」の付く作品が出ていたので混乱していました。
三者に関連性はないのですが、個人的に「青空三部作」と呼んでいますw
※「こんにゃく」および丸戸ファンには不快な表現が含まれている可能性があります。
見ないほうがいいかもといいつつ、実はそのファンにこそ見て欲しかったり。
ぜひとも反論、罵倒、誹謗、中傷を下さい
………マゾじゃないよ?
●あらすじ
(オフィシャルサイトより引用)
キミと交わした“あの日”の約束は、いまもこの島に息づいている――
本州から少し南にある離島。
坂の多い島のふもとからずっと続く石段を登りきると、
下の町や海まで一望できる高台になっており
その高台の上に主人公・星野航(ほしの・わたる)たちの通う学園がある。
しかし島の産業の大部分を占めていた大企業の工場が来年撤退することになり、
学生の数は次第に減少していた。
島にあるもう一つの高台の上に学園の旧校舎を改装した寮がある。
寮生の減少にともない現在は主人公とヒロインたちのみが住んでいるその寮は、
島の住人からは主人公のハーレムだと噂されている。
そんな寮になぜかこの時期にやってきた転校生も巻き込み、
時には反発したりしながらもドタバタと楽しい毎日を過ごしていく。
●評価
総評:84点
シナリオ:A+
ライターさんは丸戸史明さん。
代表作はパルフェ、ショコラ、V.G.NEO、ままらぶ等。
プレイ時間は25時間程度です。
キャラ:A
攻略キャラは凛奈、海己、宮穂、静、奈緒子、沙衣里+隠しキャラ茜で合計七人です。
CG:A
原画はねこにゃんさん。
枚数は差分なしで124枚。
やや少ない印象もありますが、抑えるとこは抑えてると思います。
音楽:S
間違いなく一級品です。
サントラが欲しいと心底思いました。
……初回版買えばよかった。
好きな曲は「風のアルペジオ」「もつれそうなストライド」「Calling You」「TSUGUMI SEVEN」「タイムトライアル&インターバル」「はぐれ雲のブルース」
歌はOPの「allegretto ~そらときみ~」、挿入歌の「Pieces」、EDの「さよならのかわりに」全て大好きです。
システム:S
芸が細かい! そして使いやすい!
まず第一章に入る前まではタイトル画面では第一章に入る前は南栄生島ですが、第一章に入ると(OPを見ると)寮の画像になります。
そして、起動した時間によっても風景が変わります。朝なら朝の、夜なら夜の、夕方なら夕方のというように。また、普通はタイトルで流れる音楽は「風のアルペジオ(Piano)」なのですが、10:00~10:30までの間では「はぐれ雲のブルース」が流れます。
(追加情報が得られました。詳しくはリンク先をどうぞ)
また、おまけで、シーン閲覧とは別にイベント閲覧があります。
これは自分がいままで見た全てのお話を区切ってみることができます。
私は名言集め、名シーン集めが好きなので重宝しますね。
他にも、ショートカットキー、バーなど、システム面では随一です。
理想度:A-
①主人公 △
②出会い ×
③テーマ ○
④パラレル ○
⑤整合性 ○
⑥ヒロイン ×
⑦脇役 ×
⑦ハッピーエンド ○
●難易度
行き先選択です。選択肢も出ないので難しくは無いでしょう
つぐみ寮の六人をクリアすると、タイトル画面に『約束の日』が追加され、それを見終えると茜が攻略可能になります。
オススメ攻略順序は
宮穂→静→沙衣里→奈緒子→凛奈→海己
●注意点
青臭い青春もので、なおかつベタベタなネタです。
(いや、エロゲという媒体で考えれば少ない気もしますが)
目新しいものを求めてやる作品ではないですね。
●感想(ネタバレは一応反転)
評価が難しいゲームですね……色んな意味で。
伏線の回収がさすがだね、とか。『約束の日』が泣けるね、とか。雰囲気がすごくいいよね、とか。ウィットと小ネタに富んだテキストがいいよね、とか。
そんなことはもう他の人がたっぷり言っているでしょう。ですから、(『約束の日』以外は)私は言いません。
まず、最初に。
丸戸氏ファンは見ないほうがいいかもしれないです。
いや、むしろファンにこそ見てほしいかもしれない……
とりあえず、丸戸氏に一言言いたい。
手ぇ抜いてるだろ?
いや、もちろん貶しているわけではないですよ。責めてはいるけど。
評価される理由もわかります。え? こんなでいいの? とは思いますけど。
ですし、好意的な評価ならばほかの人が沢山しているでしょう。
私は根がヒネているので好意的な点よりもその逆の点の方を挙げていきたいだけです。
で、手を抜いてると思った最大の理由は『約束の日』シナリオ。
確かに、最高に盛り上がります。泣ける話だと思います。それを否定することはできません。私も好きです。
ですが……それじゃあ、そこに辿り着くまでは?
「こんにゃく」は恐らく学園青春ドラマをエロゲーにしたものだと思います。
例えば金八先生のような卒業を最終回にしたものです。
はっきり言えば青臭いです。ですが、そういうものは私は大好きです。
「こんにゃく」はそういった青臭さを持った作品ですし、そういう意味では好みの部類です。
そしてそういった青春ドラマは感動の最終回がありますし、それはいいものです。
「こんにゃく」で言えば『約束の日』ですね。
最後の「さよならのかわりに」のピアノバージョンなんて、演出だとわかっていてもボロボロないてしまいましたし。
(キャッチコピーの「“あの日”の約束」って凛奈のことでも海己のことでも茜のことでもなく、このことだったんですよね)
ですが、敢えて言います。「最終回だけ見て面白いか?」と。
あーいうものはドラマの中で事件を起こして、それを解決して、絆や友情を深めその上で迎える別れを悲しむものではないですか?
「こんにゃく」はそういう事件が無いんです。かろうじて凛奈と海己ぐらいで。
その他のルートでは「二人の話」なんですよ。
普通のゲームならそれでいいです。
でも、描きたいのは『つぐみセブン』じゃないんですか?
『つぐみセブン』の中の二人を描きたいんじゃないんですか?
そして、各々の個別ルートでそれぞれのヒロインに再会していますよね。
「こんにゃく」で描きたかったのは『別れと再開』なのだと思います。
そして、ビジュアルファンブックを所有している友人に聞いたところ、「約束の日はどのルートのエピローグにも繋がる話。あれが最後じゃなくちゃいけなかった」と書いてあったそうです。(あくまで伝聞です。文句があったり、実際に見たら書き直します)
つまり丸戸さんは「約束の日」で、感動の最終回を迎えさせたかったわけでしょう。
そこが力を抜いていると思ったところなんですがね。
私はこの人と同じで、島本和彦の漫画が大好きです。特に「吼えろペン」が大好きです。
その中にこんな台詞があります。
「最終回で納得がいく? ふざけんなよ! 納得のいく最終回ができる奴なんてなぁ………普段セーブして書いてる奴だよ! 着地点目指してうまーくうまーく力をセーブしてやがんだよ! トリプルアクセルはやめて、2回転で安全策さ! セーブした回の載ってる週刊誌買ったらつまんなくってバカ見るよ! だからみんなコミックス派になるんだよ!!」
もちろん、全面的に賛成ではないですよ。納得のいく最終回もそれはそれでいいと思います。
ただ、「こんにゃく」に関しては私はセーブして描いてると思いました。
『約束の日』は確かによかった。それは誰しもが認めるところでしょう。
じゃあ、そこまでは? というと極めて普通のゲームなんです。
特に褒めるべき点も叩く点も見られない。毒にも薬にもならない作品というか。
キャラ萌えするゲームなんですよ。良い意味でも悪い意味でも。
ただ、あれだけ感動的な最終回がかけるならばそれだけしか書けないはずは無い。
個別ルートで『約束の日』を描いても良かったんではないんですか?
それで価値が劣るところなんて微塵もないでしょうに。
別れと再開で、再開がかなりおざなりなんですよね。だから、エピローグでの再開がショボいと感じ、『約束の日』を最後にしたのでしょう。
それはわからなくも無いです。
……私はショボくて良かったんじゃないかと思いますけど。
一番大きな山は途中にあるべきなんです。幕引きはあっさりしててもかまわないから。
もちろん、幕引きも大団円で終わるにこしたことはないですけど、それまでに山を作らないというのはどうかと思います。それこそ「こんにゃく」のように。
四分の三ぐらいで最も盛り上がって……そして最後に小さい山がある。これが普通なんじゃないんでしょうか?
大団円じゃなくて小団円でいいんじゃないんですか? 大団円のために他をつぶすなんて、それこそトリプルアクセルはやめて2回転の安全策をしているようなものだと思います。
そういう意味では確かに上手いんですがね。ある意味。
名作(85点以上)じゃなくて傑作にあたる点数にしてるのはこのあたりが由来です。
まるで貶しているようですが、責めているのです。良かった点がつぼにはまったから。
良かった点は安易に奇跡を起こさずに「避けられない別れ」をしっかりと描いたところです。
凛奈と航が衝突した「…悲しくて、寂しくて、絶望して、みんなで抱きあって、思いっきり泣いて、わめいて、それでも悲しみは癒えなくて、でも、避けられない別れは存在して。心に大きな傷を負って、塞がるのに何年もかかりそうで、それがようやく塞がったときには、忘れられない思い出になりそうで。みんなで辛さを分け合ったら少しは辛くなくなる? そんなの逆だ。余計に辛くなるに決まってる」という冒頭シーンでの航の言うとおりの結果をつぐみセブンは迎えた分けです。
そこをなんの誤魔化しも無く描いているところが評価できた点です。だから、このシーンの台詞も好きなんですが。
そういう意味で海己ルートなんかは全体からちょっとズレてたように思います。
関連で茜ルートも非常に良かったです。
「避けられない別れ」をさらに一歩掘り下げた話ですね。
「避けられない別れ」が「理不尽な別れ」になってしまって、腑抜けてしまった主人公をやさしくあやす茜。
転校初日のノリがいい性格(「お、お前は~!!!」「あ…ああっ! あんた、もしかしてっ!?」「初対面じゃねえかぁ~!!!」「だよねっ? だよねっ!?」)からして好きだったのですが、ますます好きになりました。
……隠しヒロインだからCGチョットしかないけどな!
ちなみに、約束の日と関係なく残念だったのはサブキャラが活躍できなかったところ。
いや、OP映像であんなに沢山のサブキャラ(というか脇役)が出たので脇役が良いゲームなんだと思ってたんですよ。
そこは……期待はずれでした。
●最後に
貶してないんですよ? いや、ホントに。
好きな作品だし。
「畜生!」と思いっきりさけびたいですが。
なんとゆーか……残念だったねェって感じですかね。
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