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某所の祭りに投下したものを晒します。とりあえず、誤字脱字やわかりづらい表現は訂正。
せっかくなので、感想とか落としていただけるとうれしいです。

……ちなみに「ほねこ」さんです。「こっし」さんじゃないので。

不条理な日常を書きたかったんです。
ドラえもんとかが町を歩いてて突っ込まれないようなそんな感じの。

自分でも気に入っているヒロインなだけに、話が少し不満。
機会があれば、大幅な加筆修正をしたい。


 今日はシチューにしようか。
春先だったけど、今日は久しぶりに冷えた。同居人も寒がっているだろう。
そんなことを思いながらスーパーに足を運ぶ。
確かルーと牛乳、タマネギはまだ冷蔵庫にあったはず。鶏肉とニンジン、ジャガイモ、それからブロッコリーとグリーンピースも買っていこう。
そんなことを考えながら歩いていると、空から大粒の水玉がぽつん、ぽつんと落ちてきた。
雨。そう思ったときにはすでにどしゃぶりに近いほどの大雨になっていた。
慌てて走り出し、スーパーまでの道を急いだ。

シチューの材料といっしょに傘も買った。
ニンジンとブロッコリーが安めだったのが助かった。
「ただいまー」
傘を閉じながら安アパートの扉を開ける。
……返事がない。普段だったら、すぐに飛んでくる彼女なのに。
……もしかして。
一つの予感を抱えながら短い廊下を通って部屋に入る。
居た。部屋の隅っこにコートを自らにかぶせるようにして座っている彼女が居る。
「あ……お帰りなさい」
夜の闇に消え入りそうなか細い声で彼女は言った。その言葉に僕は返す。
「ただいま、骨子さん」
そのまま僕たちは会話が無くなった。どうやら、僕のほうから切り出さなくちゃいけないらしい。
「骨子さん、コートを開いてください」
僕の言葉に骨子さんはビクッと方を震わせてこちらを見る。瞳が潤んでいる。今にも泣き出しそうだ。
……別にいじめているつもりは微塵もないんだけどなぁ。これじゃあ、こっちが悪いように感じる。
「骨子さん。怒りませんから、お願いします」
「………………」
うつむいて目を伏せた骨子さんは渋々といった感じで来ていたコートの前を開いた。
……案の定だった。骨子さんの体内には、傷だらけで水を滴らせる一匹の猫がいた。
こういうときに想像するような子猫ではない。むしろ体は普通の猫よりも大きいほどだ。ふてぶてしい目でこっちをねめつける様に見ている。
「またですか?」
「だって……雨にぬれていたから……」
困った人だ。見た感じ野良だから雨には慣れている猫だろうに。僕はため息をつく。
「あ、あの……ごめん、なさい……」
消え入るような声で骨子さんは言った。
「いいえ、怒ってないです。謝らなくてもいいんですが……」
皮膚と肉がない骨子さんの体だが、その猫を体の中にかくまっていたせいか、肋骨と背骨の一部に痛々しいひっかき傷が出来ていた。
「大丈夫ですか? その傷」
「はい。何日かすれば自然に治りますから……」
どうやら、僕たち普通の肉のある人にとっての擦り傷、切り傷の類と同じ程度の傷らしい。
「猫は、雨がやんだら外にやってくださいね」
「はい」
骨子さんは生き物が雨にぬれてるのが嫌みたいだ。
そういえば、僕が骨子さんを『外から拾ってきた』のも雨が降っている日だった。……条件反射というか、自分がされて嬉しかったことを他人にしているみたいだ。
最初、まともなのが顔だけで体の残りの部分が全部骨の骨子さんを見たときは驚いたが、今では慣れた……というよりも普通に暮らしている。
骨が全部見えている状態というのは裸と同じようで、骨子さんは室内でもコートを欠かさない。
一応下にシャツは着ている時もあるのだが、あれは普通の人で言う下着の感覚らしい。
(ちなみに普通の下着は、少なくとも上はつけていないみたいだ。トップバストとアンダーバストにほとんど差がないのでつける必要もないんだろう)
確かに、彼女のシャツ姿は時にその下にある肋骨が見えるときもある。そんなときの彼女は非常に扇情的で魅力的だ。
僕の一時的な許しを貰った骨子さんは猫を見ている。一応ペット禁止だし、あんまり泥や傷をつけてもらったら困るんだけどまあ、仕方がない。
僕は自分と同居人と、一時的なお客のために夕食を用意することにした。

夕食は普通のクリームシチューにした。
ビーフは牛は少し高いし、僕も骨子さんも赤いシチューよりも白いシチューのほうが好きだし。
猫にも冷ましたシチューを少しだけあげた。
……子猫に牛乳は悪い、って話も聞いたことあるけど、温めてから冷ましたものだし、第一子猫じゃないわけだし大丈夫だろう。多分だけど。
骨子さんはとても美味しそうにシチューを口に運ぶ。その姿はとても上品で綺麗だ。
ほっぺたを桃色に染めてシチューを頬張る骨子さん。
美味しそうに食べてもらうのは作った僕としてはもちろん嬉しいのだが、それ以上の感情があるのもまた事実だった。
よし、と決意してスプーンを止めて骨子さんに尋ねた。
「骨子さん。次の日曜日一緒にどこかに遊びに行かないかな?」
びくっ、と肩を震わせて骨子さんが僕のほうを見た。
困惑の表情が浮かんでいた。言っている言葉の意味がわからないという顔だ。
「骨子さん、いつも家の中じゃ飽きるでしょう? 外に遊びに出ましょうよ、たまには」
「あの……えと……で、でも、服とかありますし」
「大丈夫だって。長めのコートとズボンを着ていけば」
いつもだったら、ここで引き下がっているところだけど今日の僕は少しだけ執拗だった。
話は数日前までさかのぼる。

「は? それで何? お前さん家出娘拾って何もしてないの? 手も出してない?」
「うん……まぁ……」
「で、惚れてるって? 馬っ鹿だねー、お前」
アルバイト帰りに中学高校時代の友人に会ったのは先日のことだった。
懐かしさで話すうちに骨子さんのことに話題がいった。
「女なんて一発やっちまえばこっちに惚れるようになるって。俺だってそうやって何人も食ってきたんだしな」
ゲラゲラと下品に笑う友人。そういえば、昔っからこういう奴だった気がする。
決して悪い奴じゃなかったんだけど、女好きで下品なために人による好みが分かれる奴だった。そういえば、高校のときには痴情のもつれの末に女に刺され たという噂が立った。後で聞いたところどうやらそれは事実らしく、腹の傷を何故か誇らしげに見せ付けられた覚えがある。
「……ま、俺の言うことなんて信じられないかもしれんがな」
こちらの心中を見透かしたようなことをいいまたゲラゲラ笑う。
「まあ、それでもその家出娘お前んとこ出てないんだろ? お前に対してなんか特別な感情は持ってると思うけどな、俺は」
「うーん……」
彼には話をややこしくしないために、骨子さんを家出娘を拾った……というふうに説明しておいた。
「お前以外に頼れるやつがいなかったとしても一回は外に飛び出た身だ。はずみがついてるから出ようと思えばもう一度外に出るのだって簡単なはずだ。それをしないっていうのは、お前との生活が気に入ってるってことさ」
なるほど……確かにそうかもしれない。どこで暮らしてたのかはわからないけど、骨子さんにだって、骨子さんなりの『普通』の生活があったわけで……
「で、お前はその子に惚れてるんだろ?」
……ストレートな物言いに思わずうなずく。
「じゃ、話は簡単だ。外にデートにでも誘えよ。お前のことだ。二人で遊びに行くー……なんてことはどうせしてないんだろ?」
得意げな表情に腹が立つが事実なので言い返せない。
「その子を誘ってさ、二人で遊んでデートして、買い物して甲斐性のあるところを見せてプレゼントかなんかでもすれば向こうも惚れるさ。さっきも言ったけどその子はお前に対して悪い印象は抱いてないと思うしな。そしてあわよくばその帰りにでもホテルに」
いや、それはいい……というか、物理的に不可能だし。
というか……
「お前さあ、その口調ひょっとして……その、家出娘との経験があったりとか……」
「さーて……なーんのことだかなー?」
ケラケラ笑いながらそっぽを向く友人。
やれやれ、と思って僕はため息をついた。
……でも、デートには誘おう。うん。決めた。

「で、でも、貴方の都合とかも……」
「大丈夫だよ。今度の日曜と月曜は非番だから」
その後も骨子さんはあーとかうーとかえーとか唸って断る口実を探してたけど、最終的には折れてこくんとうなずいた。
様子を見た感じじゃ、嫌がってると言うよりも恥ずかしがってると言った方が近いみたいだ。耳まで真っ赤になってる。
そんな骨子さんを僕は心のそこから可愛らしいと思った。

日曜日。今日は骨子さんとデートする日だ。
……普段から家の中に一緒にいるのに緊張するのはどうしてだろう?
「骨子さん、そろそろ行きましょうか」
「はい」
はにかんで嬉しそうに答える骨子さん。
茶色のコートとベージュ色のズボンを着ている。今日の気温が低くて良かったと少し思った。
他人に骨を見せたくない骨子さんに暑い日は鬼門だろう。
バスに乗って町のほうまで遠出する。
美味しいご飯を食べて、買い物をして、喫茶店に入って甘いものを食べる。
最後は最近新しくできたデパートの屋上にある観覧車にでも乗ろう。
行きのバスの中で僕はそんな妄想をしながら思わずふふふと笑った。
「あの……」
「え?」
ふと気がつくと骨子さんが僕を呼んでいた。
「どうかしましたか?」
「えっと……どうかしたわけじゃないんですけど……」
もじもじしながら骨子さんが僕のほうを見る。
「その……手を握ってもいいですか?」
……真っ赤になって、そんなことを言う骨子さん。
もちろん、僕の返事は決まっていた。
「はい。喜んで」
骨子さんの硬く白く冷たい手の骨を握る僕。それだけで幸せだった。
ふと見ると骨子さんは耳まで真っ赤にさせてうつむいている。ああ。可愛いなぁ。
きっと僕の顔も上気して真っ赤なんだろう。
バスに揺られながら、この時間がずっと続けばいいのに、なんてとめどめも無いことを考えた。

気がつけばいつの間にか夕方になっていた。
今日は、とても楽しい一日だった。
昼食のイタリアンのお店に着くまで骨子さんは僕の手をぎゅっと握ったままで離さなかった。
少し痛かったけど、骨子さんの手を握っていて幸せな気持ちになったのは言うまでもない。
お店では美味しそうにパスタを食べてくれた。選んだ僕としては喜んでくれてとても嬉しい。でも、お店を出た後に骨子さんはそっと僕のご飯のほうが美味しいと言ってくれた。
買い物は骨子さんは髪飾りやブローチなど身に着ける小物を買っていた。
服のほうは、試着ができないから、と言って見なかったみたいだ。
その隙をねって僕は上下がブルーの、シンプルで可愛いワンピースを購入した。
黒髪ロングの骨子さんにはこういう長くて可愛らしいスカートがとても似合いそうだったから。
あとでプレゼントして驚かせよう。そして、喜んでくれると嬉しい。
買い物が終わった後は喫茶店に行ってパフェを注文した。
家ではあまり甘いものを作らないので、骨子さんはとても喜んでくれた。また、食べたいとも言ってくれた。
観覧車は残念ながら動いていなかった。どうやら、あれはオブジェのようなものであって実際に動くことは無いらしい。
骨子さんは少し残念そうな顔をしていた。
……今度は遊園地に連れて行ってあげよう。そう思った。
帰りのバスの中、骨子さんは少し疲れたようでうとうとと舟をこいでいた。
かくんかくんとゆれる頭と襟口から覗く頚椎骨を見ながら、ああ僕は今とても幸せなんだなと思った。
バスが大きくがくんと揺れ、骨子さんがびくっとしながら目を覚ました。
そして、僕が骨子さんを見ていたことに気がつくと、恥ずかしさから顔を赤くさせて
「……ごめんなさい」
そう小さな声でつぶやいた。
謝ることなんてないのに。
「……また遊びに行きましょうね」
そういった僕に骨子さんは満面の笑みを浮かべて
「……はいっ」
そう返事をした。

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好きな作家さんは藤子・F・不二雄、前田珠子、新井素子、吉岡平、横山信義、林譲二、橋本純あたり。
好きな音楽は海援隊などのフォーク、中島みゆきなどのニューミュージック。あとはLiaさんや新良エツ子さん、じまんぐさん、Sound Horizon(一期、二期両方)、Suaraなど。
歌じゃないのなら地中海風というかラテン風、イタリア風とテクノっぽいのやカントリー音楽。ピアノ音楽も好き。

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